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2023.05.22

【25年ぶりの夫婦旅行】 初めてのニューヨークへ(後半)

こんにちは、本澤建築設計事務所の本澤崇です。
いつも社長通信をご覧いただき、ありがとうございます。

前回の記事では、2022年9月に妻と二人でニューヨークへ行くことにした理由や、そのときに感じたことを紹介しました。

今回は、ニューヨークで数多くの施設や場所に訪れた中で、観光化されている場所は勿論、何気なく印象に残っている場所・スポットを写真とともに紹介いたします。


建造物・芸術・歴史、私が見たニューヨーク
2001年のアメリカ同時多発テロで崩落したワールドトレードセンタービルの跡地に作られた
911メモリアルミュージアムのリフレクティングプール。

まず紹介するのは、911メモリアルミュージアムの敷地内にあるリフレクティングプール。
周辺環境を反射して景観とする水景物の一種で、庭園や公園等に設ける人工の池です。

滞在日に9/11が含まれていたこともあり、訪れようと決めていたスポットの一つです。

こちらのプールは、ワールドトレードセンターを象徴するツインタワー、1WTC(北タワー)と2WTC(南タワー)の跡地に建造されたものです。
様々な陰謀論が唱えられていますが、多くの尊い命が失われた9.11事件。
池の外周には犠牲者の名前が刻まれ、静謐な水の流れ落ちる音の中で哀悼の意を捧げてきました。

ニューヨーク証券取引所にある「恐れを知らぬ少女」像。
2017年、金融街の象徴である雄牛のブロンズ像「チャージング・ブル」に正面から対峙するように設置された後、
現在の場所に移設されました。

続いて訪れたのは、世界中の金融が集まるニューヨーク証券取引所です。
911メモリアルミュージアムからウエスト・ストリートを南下し、ウォール街を目指します。
ウォール街を進むとやがて見えてくるのが、「恐れを知らぬ少女」の像です。
高さ約50インチ(127cm[1])・重さ約250ポンド(110kg)の少女の像には、職場の性別の多様性について訴えるメッセージが込められています。
少女の足元には『Know the power of women in leadership. SHE makes a difference(リーダーシップを発揮する女性の力を知ってください。SHEは違いを生む。)』と刻まれたプレートが置かれ、女性の社会的躍進を後押ししています。

「チャージング・ブル」像。この突き上げるようなブルの体勢には金融相場を上昇させるという願望も込められている。

そしてニューヨーク証券取引所でぜひ見ておきたかったのが、こちらのチャージング・ブル像でした。
「ブル・マーケット」(アグレッシブで楽観的な繁盛市況・上昇相場)を象徴するこちらの雄牛は、体をひねり後ろ足に力を溜めこむような姿勢をしています。
猛々しいチャージング・ブルを前にして、自社の事業はもちろんのこと、協力会社やお取引先企業の業績もボトムアップしていくことの決意を新たにすることができました。

ちなみに、ニューヨーク証券取引所の建物はそれほど大きくなく、世界中の金融をこの建物の中で動かしているのかと思うと不思議な感覚にとらわれました。

メトロポリタン美術館のスフィンクス横宮殿

ニューヨークでは芸術も見どころの一つです。
私達夫婦は、世界最大級の美術館「メトロポリタン美術館」も訪れました。
メトロポリタン美術館で感銘を受けたのは、写真のデンドゥール神殿です。
紀元前15年頃に、ローマ皇帝アウグストゥスがヌビアの都市に建設した神殿で、時を経てエジプトからアメリカに寄贈された建造物になります。
歴史が薫る佇まいと巨大建造物が海を超えて移設されるという壮大なスケール感が相まって、感動のあまりに声を失いました。
メトロポリタン美術館の中でも、悠久の美とロマンを感じるデンドゥール神殿は、いつの日か再び訪れたいと思っています。

コロンビア大学

偶然通りがかることになったコロンビア大学。
この日は丁度入学シーズンということもあり、サークル勧誘で大いに盛り上がっておりました。
学生たちを眺めていると、若さからくるエネルギーは日本の学生と変わらないものの、活発な異文化コミュニケーションが若者の感性や発想を豊かに育んでいくのだろうと納得しました。
アメリカは様々な人種が集まることから、「サラダボウル」と例えられますが、この風土がアメリカのイノベーションの礎なのかもしれません。

多様性が求められている現代において、様々な人種が集まる場所で過ごすことは、何物にも代えがたい経験となるはずです。日本の若者ももっと、世界に飛び出してほしいですね。

ワン・ワールドの翻訳ガイドタブレットの案内

国際的なことで言えば、ひとつ気になったことがありました。こちらの写真はワン・ワールドの翻訳ガイドタブレットの案内に対応している言語を表記している看板なのですが、日本語はなんと最下部にありました。

これを見たとき、私は「国際社会における立ち位置はこんなところなのか…」と認識しました。もしかすると「日本語の表記があってよかった」という解釈のほうが正しいのかもしれません。

実際に現地で会う東洋人のほとんどは中華系の人だったかと思います。たまに観光客の韓国人には会いましたが、日本人はほとんど見かけませんでした。

とはいえ、2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ではアメリカの地で日本代表が世界一に輝いたことで、少しでも世界の目が日本を向いてくれたらうれしいですね。WBC日本代表のように、世界で活躍する日本人が増えることを切に願うばかりです。

ハイラインにて。廃止された鉄道の跡地に作られ、両脇の茂みの下に当時使われていた線路がある。
飽きさせない空間づくりのために、著名な建築家による建築物をオブジェのように配置している。

こちらはマンハッタンの高架跡地を再開発したハイラインの写真です。
ハイラインは19世紀半ばに建設された高架鉄道で、1980年まで貨物輸送に利用されていました。
廃線後は荒廃した風景と化していましたが、2006年に鉄道から都市公園へ転用するプロジェクトが始動し、現在では年間500万人近くが訪れるランドマークに生まれ変わりました。

散策してみると、所々に鉄道のレールが遺されており、歴史を継承した再開発であることを伺い知ることができます。
日本でもハイラインを模して、京都の梅小路短絡線路後を利用した空中庭園が整備されました。
新しいものを「創造」するとき、その裏には「破壊」があるものです。
例えば、既存住宅を解体し新築住宅を建てるように、破壊と創造は表裏一体となっています。
ですが、こちらのハイラインのように、文化や歴史、そこで暮らしを営んできた人々の記憶を継承する取り組みも新たな創造です。
都市の再開発では、スペースや資源に限りがあるので、ニューヨークのハイラインのような視点も今後不可欠になってくることでしょう。

当社でも古民家をデイサービス施設にコンバージョンするといった転換を設計に取り入れています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。

ニューヨーク近代美術館【MoMA】の中庭

その後、足を伸ばしてニューヨーク近代美術館へ。
展示されているアートはどれも筆舌に尽くしがたい素晴らしいものばかりでしたが、私が最も目を凝らしたのは建物から眺める中庭の景色でした。 中庭を挟んで正面に位置するのは、2004年に谷口吉生氏が改装と増築の設計を施したMoMA(モマ)です。
その背景にはニューヨークの摩天楼が建ち並び、俯瞰して観てるとひとつの巨大アートのように目に映りました。
世界最先端の場所に、同じ日本人が設計した建築物がある。
誇らしくもあり、尊敬の念を感じずにはいられませんでした。

ブルックリン橋(1883年竣工)

イースト川をまたぎ、マンハッタン島とブルックリンを結ぶブルックリン橋にも行ってきました。橋は二層に分かれていて、上の層は歩いて渡れるため、マンハッタン島からブルックリン側へとのんびり歩いて30分位かけて渡ってきました。
アメリカで最も古い吊橋のひとつであり、鋼鉄のワイヤーを使った世界初の吊橋でもあります。マンハッタンや周辺の景色を楽しみながら、自由の女神も小さく見えました。
橋そのものが見どころ満載で鋼鉄のワイヤーが美しい網目を織りなし、ゴシック調のブルックリン橋を彩ります。
ニューヨークのシンボルに相応しい荘厳な造りで、思わず見惚れてしまいました。

ダンボにあるホットドッグ

ニューヨークに来たらホットドッグだろうと言うことで、ブルックリン橋を渡った先にあるダンボでは、ロブスターのホットドッグを注文しました。ここで1つクイズです。ホットドッグに加えてビールを2杯とスープを注文したのですが、合計でいくらかかったと思いますか?

・・・

正解は約15,000円です。そもそもニューヨークの物価は異常に高いことに加え、私たちがニューヨークへ滞在していた時期は1ドル150円だったことも大きな要因です。

高額な出費にはなったものの、ホットドッグは美味しくいただきました。

ワールド・トレード・センター駅

最後にご紹介するのが、世界一美しい駅ワールドトレードセンター駅のオキュラスです。
ルーバー状の白い骨格が張り巡らされた建物内は、異世界に来たような興奮を覚えます。

この施設だけでなく訪れた施設の数多くが、地震のない国だからこそできた建物なのでしょう。建物の基礎や構造体としての成り立ち方、構造計算はどうやっているのか、その他空調や換気はどうしているのか、などなど、一設計者としていろいろな考えを巡らせてしまいました。

帰りの機内にて
シャンパンの帝王と称され、多くの人を虜にしているkrug(クリュッグ)。
また、私が大好きなウイスキー「響21年」なかなか飲めませんが
キャビンアテンダントさんが作ってくれたアニバーサリープレート

名残惜しくも帰国の時間がやってきました。
美酒とニューヨークの余韻に浸りながら、帰りのシートも「THE Suite」なのでのんびりと機内で時間を過ごしていたところ、結婚記念日を迎えたこともあり、CAの方から手作りのアニバーサリープレートをプレゼントしていただきました。
旅の締めくくりでも、うれしい気遣いに触れ、今回の旅行は大成功でした。
ニューヨークの文化・芸術・人から受けた影響は少なくありません。
日本でこうして社長通信の筆を執ると、あのときの素晴らしい体験が私の血潮になっていることを強く感じます。
私のこれからの仕事に、人生に、強烈な刺激として心にのこる旅路でした。



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